NCTのドヨンにとって初めてのソロツアー「2024 DOYOUNG CONCERT [Dear Youth,] in JAPAN」のファイナル公演が9月7、8日に東京体育館メインアリーナで開催。今回は8日、最終日の模様をレポートします。
コンサートの1曲目は、新たな始まりを予兆させる「Beginning」から。生バンドの演奏に身を任せ、時折目を閉じ、上を向く様子は、長いソロツアーの終わりを惜しんでいるかのようにも見えた。この曲はドヨン自身が作詞作曲に参加した曲。原題は「新しい春の歌」というように、まさに新たなはじまりをテーマにした曲でもある。この曲の最後のパート、「あの宇宙を一緒に羽ばたいていくんだ/世界中を満たすように歌うんだ/この歌に乗って僕が夢見てきた/あの場所で出会って、君に/新しい春の歌を」の箇所のみを高らかに歌い、初めてのソロコンサートのはじまりとしたドヨン。1曲目から今回のツアーに懸ける想いが伝わってきた。
2曲目の「Like a Star」ではミラーボールによって乱反射された光が飛び散り、まるで広い会場が星空のよう。「Lost In California」では「Sing!」と客席を煽って一緒に歌わせ、「Maniac」ではロックなサウンドに負けない声量で会場を熱くする。序盤からボーカリスト・ドヨンの本領を遺憾なく発揮し、客席を魅了した。
「歌を歌うドヨンです」と自己紹介した後には、日本語で「お変わりありませんか?」を連呼。実は最近、日本語を勉強している時に習った言葉だそうで、「大人な感じがあります」と満足げ。そして6月からスタートした日本ツアーを振り返り、「僕にとってこの3ケ月がいい記憶として残っています」と笑顔を見せた。さらに、「日本ツアーをここ(東京体育館)でできて本当に、いやめっちゃうれしいです」とわざわざ言い直した後、「最近の若者は“めっちゃ”をめっちゃ使いますよね?」と確認。“めっちゃ”はこの後もMCで多用されることとなった。
タイトルツアー『Dear Youth,』については、「僕の青春を応援したいという意味があります」だそう。「このコンサートで僕の歌を聴きながら、みなさんにいろいろな感情を感じてもらいたいです」と解説。「初めてじゃない方も、初めて見る感じで」とお願いすると、客席のシズニ(NCTのファンの呼称)からは笑いとともに拍手が。その約束通り、「初めての人?」というドヨンの声にみんなが元気よく「はーい!」と手を上げて答えていた。ドヨンはさらに「公演中にお腹がペコペコだとよく歌えません。途中に僕がバナナを食べちゃうかもしれません」と告白。“ドヨンさんはステージの上でバナナを食べました”というSNSの投稿を見つけてしまい、「約束したのに……残念です」とポツリ。どうやら前日もバナナについては秘密にしてほしいとお願いしていたようで、「今日、約束してください。僕たちだけの秘密です」と再び固く約束してからバナナを食べていた。
「次の曲は隣の人とめっちゃ楽しんでくださいね」という紹介で始まった「Serenade」ではしっとりとしたムードで、続くEXO・ベクヒョンとのコラボ曲「Doll」は正統派バラードを、そしてあいみょんの「愛を伝えたいだとか」では正確なピッチとグルーヴィなノリで客席を熱中させた後、再びバナナタイムへ。
「この曲も日本のファンのみなさんだけが聴ける曲です」と紹介したのは、日本のオリジナル楽曲でドラマ「星降る夜に」の挿入歌にもなった「Cry」。ドヨンいわく「バラードを歌うのは他の曲より難しいです。なぜなら他の曲より集中力が必要ですが、ちょっと僕には難しいです」と謙遜しながらも、東京体育館を完全にドヨンの世界に引き込んだ。コンサート中盤にはNCT 127の「Sticker」やNCT Uの「Baggy Jeans」などもソロバージョンにアレンジして披露。「次の曲はみなさんがちゃんと聴いてくれたらうれしいです」といって歌ったのは、中島美嘉の「雪の華」。この曲は韓国でも長年愛されているバラードだが、「実は12月にこの曲を韓国語でリメイクしてリリースすることにしました」とドヨン。アカペラで韓国語でワンフレーズ歌ってくれたバージョンは母国語だけに耳馴染みもよく、即興だったにも関わらず大きな拍手が沸き起こった。
アップライトピアノを弾きながら歌いはじめたのは、ソロデビューアルバム『YOUTH』のリード曲「Little Light」。さわやかなメロディの中に力強いドヨンの思いが乗った歌声と会場のシズニたちのコールが重なる一瞬は、このコンサートでも特に盛り上がったモーメント。そして本編ラストは、コンサートの始まりに歌った「Beginning」を今度はあらためてフルで歌唱。はじまりの曲で締めくくったのは、コンサートはこれで終わりでも、ソロアーティスト・ドヨンの道はここからがはじまりなんだと訴えかけているかのようだった。
アンコールでは「Dallas Love Field」を歌いながら会場も一体となって大合唱し、「僕が一番感謝しているみなさんに、言いたいことを歌で伝えます」と言って歌ったのは、このコンサートのために準備したという未発表曲「Dear」。「僕の世界は君、君の世界は僕だから」という熱烈な歌詞に、ドヨンがシズニを想う心の一端が垣間見えた。歌い終わってドヨンが歌詞に言及し、まずは大きな会場で歌えるのはみなさんのおかげだと挨拶。そして、「いつでも変わらないで、僕の場所で精一杯歌を歌います」と宣言した。「もしかしてみなさん、推し活を休みたかったら休んでも大丈夫です。僕は僕の場所にいるので、いつでも戻ってきてください」と真摯に語るドヨンに、シズニからは惜しみない拍手が贈られた。
久保田利伸の「La La La Love Song」を歌いながらトロッコを一周し、アリーナを埋め尽くしたシズニたちを見つめ、目頭を熱くするドヨン。会場を回るうちに感極まり、しゃがみこんでしまう瞬間も。この日の、そしてソロツアー最後の曲「Rest」を歌いながらも涙を堪えて天井を見上げ、何度も何度も繰り返し「ありがとうございました!」と感謝を口にした。コンサート中、「自分は20代のすべてを音楽に捧げてきた」と語り、それだけ真摯に音楽に打ち込んだ人だからこそ与えられる感動。自身のソロアルバム『YOUTH』と、自身の青春に向けて親愛を込めて付けた『Dear』、その2つの文字をつなげてつけられたツアータイトルは、思えばドヨンのイニシャルでもある。20代の、今のドヨンを思う存分表現した初めてのソロツアーで、ドヨンはこれからも自分は歌をうたい続ける人であることを、そしてこれからもずっと同じ場所に変わらずいることを高らかに歌い上げたのだった。
Photograph_田中聖太郎写真事務所 Text_Yunico Woo