待望の、という言葉がこれほどハマるライブはあるだろうか。オンラインという形ではあるが、開催が発表された瞬間からSNSでは、世界中のファンがこの日を待ち焦がれていた。
3年ぶりとなるライブの1曲目を飾ったのは『Good Evening』。2018年活動休止前に韓国でカムバックした時の活動曲だ。浮遊感のあるエレクトロサウンドに菅原小春がコンテンポラリー風のダンスを振り付けて、彼らの新たな魅力を引き出した。まっすぐ前を見つめ、ゆったりと動き出すテミンが映し出される。4人はゆらゆらと揺れるような舞い、終盤は力強くステップを踏みながら踊る。星が瞬く夜空をバックに踊る彼らの姿は、多幸感があふれている。こんなパフォーマンスができるのは唯一無二なSHINeeの個性だ。2曲目はショーアップされたパフォーマンスで魅せる『Dream Girl』。マイクスタンドを用いた派手な振付、くるくる立ち位置が変わるフォーメーションと、見応えあるダンスに加え、今回はステージに設置されたバンドが開くとバンドが登場する演出も。バンドサウンドをバックにメンバーは安定した歌唱を聴かせる。続いて新曲『I Really Want You』を披露。このByond LIVEが初披露で、どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみにしていたファンも多かっただろう。ダンサブルなレトロサウンドとSHINeeは期待以上に相性抜群。4本のマイクスタンドを立てて歌いながら、全身を使ったキャッチーな振付で盛り上げる。マイクスタンドから離れると胸を打つようなポーズをしたり、腕をグルグル回したりと、さらに踊りまくり。続くダンスナンバー『Heart Attack』と『Married To The Music』のパフォーマンスも見応えたっぷりで、前半から目の離せないステージで楽しませてくれた。
ここで一旦MCへ。「これ抑えた方がいいんじゃない?」とキーがミンホの前髪を抑えると、「美容師さんがやってくれたんだよ」とミンホが言い返す。そんなわちゃわちゃした掛け合いからも伝わる仲の良さが微笑ましい。最初のMCでは「完全体で返って来ました、SHINeeです!」とオンユの挨拶を皮切りに、メンバー一人ひとりがファンに会えた喜びを口にする。そしてオンユがインドネシア語、キーがスペイン語と英語、ミンホが中国語とタイ語とさまざまな国の言葉で挨拶する場面も。テミンが「自分からやると言いました! 得意です!」と笑顔で話し出したのは、なんとドイツ語。キーからは「それ韓国語じゃない? もっと特有のイントネーションでやらなきゃ」と突っ込まれるも、ミンホからは「上手だったよ」とほめられて握手を交わす。気を良くしたテミンは、続けて「みなさんにお会いできてうれしいです。今回のコンサートのためにたくさん準備しました。残りのステージも楽しんでください」と日本語でも挨拶してくれた。次の曲の紹介でミンホが「春のような曲で分かりますか? テミンみたいですね」と言うと、ドイツ語で突っ込まれたお返しか、テミンが「キーさんが一番体重があった頃の曲です(笑)」と紹介。Beond LIVEのためにアレンジしましたというオンユの言葉で『Hello』のイントロが流れ出す。初々しい恋の始まりを歌う大人になった4人の優しい歌声が心地良かった。『View』では、Beyond Liveならではの最新技術と洗練されたSHINeeのパフォーマンスが融合。EDMのサウンドと最新技術が作り出すスペイシーなグラフィックの中で、テミンが美しいターンを見せてくれた。
メガネをかけたSHINeeが登場するスタイリッシュな映像の後、4人はマタドール風の華麗な衣装を身につけて登場。新曲『CφDE』、『Prism』と2曲続けてドラマチックでダンサブルなステージを展開し、どんどんフルスロットルになっていくSHINee。特に『Sherlock』と『Everybody』を立て続けに披露した瞬間は圧巻だった。どちらもトニー・テスタが振付したSHINeeの代表曲。ミンホの“SHINee is Back”というフレーズで始まる『Sherlock』は、SHINeeの帰還を改めて実感させてくれた。ストーリー性のあるダンスを踊りながらも、ハリのある歌声を聴かせるのはさすがとしか言えない。“おもちゃのロボット”をコンセプトにした『Everybody』は次々と変わるフォーメーションで曲の世界観を表現。ミンホが人形に扮したメンバーに息を吹き込み、クライマックスはテミンとミンホを先頭に、足元をオンユとキーが支えて“人間飛行機”を形成。鬼気迫るパフォーマンスに誰もが釘付けになったに違いない。
ここで再びMCタイムへ。毎回コンサートにサブタイトルをつけるのが恒例のSHINee。オンユが「今回のコンサートのサブタイトルを決めよう!」と切り出すと、テミンが「エアコンはどう? 僕たちがさわやかなエアコンになる!」と真っ先に発案。メンバーの反応がイマイチなことを察したのか「キーヒョンが考えたんです!」と言い出すテミンにキーは苦笑。そこでミンホが「ムジョッコン!!(日本語で無条件という意味)」とトロットを歌いながら激推し。「今までテミンの案ばかりだったからムジョッコンにしよう」というキーの後押しもあり、今回のサブタイトルは「ムジョッコン」に決定!! 再びトロットを歌い出すミンホはすごくうれしそうだった。
ついにコンサートは終盤へと突入。最新曲『Don’t Call Me』をMVで着たさまざまな衣装に早変わりする演出で楽しませてくれた。そしていよいよリパッケージ・アルバムの表題曲『Atlantis』を初披露。イントロのギターがカッコイイ楽曲をオンユは「SHINeeだけの清涼感のある曲です」と紹介。テミンのハイトーンボイスの歌い出しはその言葉通り、清涼感たっぷりでキーからオンユへとソロパートを歌い繋いでいく。細かい手の動きやステップも難しそうな振付をガシガシと踊るSHINeeはさすがのカッコ良さ。
ラスト近くになってもキラキラのオーラをまとった5人は、『Love Like Oxygen』、『Kiss Kiss』、『JULIETTE』を披露してファンの心をときめかせ、ラスト2曲の衣装替えのために最後のMCタイムに。先にオンユとミンホが衣装替えをする間、キーとテミンがトークを担当。腕を組んで花道を歩いて中央ステージへと移動するふたりは寸劇をスタート。キーは「(テミンと)幸せに生きていきます!」と涙ぐみ、テミンはひざまつき笑顔でキーの薬指に指輪をはめるふり。そしてギュッとお互いを抱きしめ合うふたりの姿を見たファンの「キャーッ!!」という歓声が世界中から聞こえるようだった。
白い衣装へと着替えた4人が、「大切な曲です」と紹介して歌い出したのはジョンヒョンが作詞した『Selene 6.23』。美しい歌詞を静かに、情感を込めて歌う4人のハーモニーは心に沁みる。ラストを飾ったのはサビのユニゾンが美しい『An Encore』。紙吹雪が舞う中、終盤の展開がドラマチックな楽曲を歌い上げる。最後はメンバー全員横位置列に並び、お約束のサムズアップ。最後はオンライン越しのシャウォル(彼らのファンであるSHINee Worldの略称)に向けて「ありがとう!」「とってもとっても愛してる!」と言いながら、お互いにギュッと抱きしめ合うかわいい姿を見せてくれた。
本編終了後はカジュアルなTシャツに着替えて、生配信の視聴者に向けたサプライズ配信がスタート。配信を見た人たちからの質疑応答に答え、「こういう形の公演は初めてなので慣れない部分はあったけど、コンサートを見たみなさんの気持ちがちょっとでも満たされたならうれしいです」(キー)、「日々の生活で疲れたり、僕たちと離れている時にツライことがあると思います。これは僕の欲だけど、そんな時にみなさんの力になりたいです。だからずっとそばにいてください」(テミン)、「ライブを通して、僕らの愛が伝わってほしいです」(ミンホ)とファンへの気持ちを語る。オンユは「リパッケージアルバムの活動が終わったら、しばらくSHINeeとして活動できなくなると思います。それでも待っていてくれるから、またカッコイイ姿で戻ってきます」と、途中で言葉を詰まらせながら約束してくれた。世界中でツアーを重ね、今や円熟した魅力も放ち出したSHINee。それでも新しいアルバムでカムバックするたびに、いつまでも新たな驚きを与えてくれる。そんな彼らが「再演」してくれる日を心待ちにしたい。
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