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2023/2/10 CULTURE

【エッセイ『K-POPバックステージパス』発売記念。MC・古家正亨さんインタビュー(全3回・2回目)】 「ステージではアーティストの皆さんを少しでもホッとさせてあげたいんです」(古家さん)

S Cawaii! 編集部

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MCでありラジオDJの古家正亨さんの新刊『K-POPバックステージパス』発売記念として、インタビューを敢行。「K-POPファンがなりたい職業1位」と言われる古家さんの実際の仕事の内容や仕事をする上での理念について、話をお聞きました。インタビュー全3回、2回目です。

本番当日に台本を書くことも……
下調べや準備には何日もの時間をかけます

−−MCのお仕事について、イベント当日の流れを教えていただけませんか?
場合によりますけど、例えば、夜公演なのに朝9時に現場入りとかは普通にありますね。出演者がメイクをする前にリハーサルをすることもありますし、さらにその前に、台本の打ち合わせをすることも多いですし……。リハーサル自体は、アーティストと一緒にしない時も多いんですが、技術さんとスタッフさんとは念入りにします。最近だと、韓国の舞台制作チームと仕事することも多いんですね。ワールドツアーの一環で日本に来る場合、韓国のスタッフがそのまま演出・技術を担当することが多いので。以前は、日本側が制作を担当することが多かったんですけど……。なので、今はリハーサルを念入りにやるようにしています。

空き時間はドラマを観たり、通訳さんと控室が一緒のことが多いので、一緒にお話したりすることが多いですね。でも意外と時間はないです。調べなきゃいけないものも多いので。場合によっては、当日の台本を手書きで書いてます(笑)。韓国側が台本を制作する場合は、それを日本にローカライズする仕事は僕の務めです。韓国語の表現と日本語の表現ではニュアンスがまったく違うこともあるので、それを日本語らしい表現に置き換えるということをしたりします。この作業も意外と時間がかかるんです。なので、本番まで残された時間は、あまりないですね。

あとよくあるのが、「古家さんのフリートーク」ですね(笑)。「この間を5分、10分トークで繋いでください」というのは結構あります。しかも当日に明らかになることも多いんです(笑)。かつて、とあるファンミーティングでは、当日に「ここで衣装を着替えることになったので、トークで繋いでほしいです」と言われて、「どれぐらい時間がかかりますか?」と聞いたら「わからないです」って(笑)。「準備が済んだら合図するので、それまで繋いでください」って言われたことがあるんですが。その時は最長で30分、一人でつなぎました。あれは本当に困りましたね。ファンの皆さんが楽しみにしている空間・時間に、おじさんがステージで何分もしゃべらなきゃいけないんですよ(笑)。「早くスターを出して!」という訴えは、当然ファンの皆さんの目力で伝わってくるんですが、気持ちは僕も一緒です(苦笑)。

−−最近では、イベントで古家さんがそのアーティストに対する想いをトークする場面が増えたように思います。
かつてに比べてつなぐ時間が伸びたという背景はあると思います。なので、単純なインフォメーションやファンの方とのやりとりだけでは、時間がもたなくなってきているんです。なので、そういう時間が読めない時は、その日の主人公に対する思いだったり、自分との想い出話に花咲かせる時もあります。きっと、そんなトークの中にファンの皆さんと共有できるところがあるのではないでしょうか。

−−そのトークを聞くのが好きというファンの方も多いですよね。今までで一番印象に残っているお仕事は何ですか?
先ほどのフリートークにちなんだ話なんですけれど、とあるドラマのイベントで、当日いきなりトークで20分繋いでほしいと言われたんです。理由を聞いたら、当日用意していたコーナーができなくなって、その時間がまるまる空いてしまうと……。そこを繋いでほしいと言われたんですね。でも「さすがに20分はできません」と言ったら、「何とか映像を組み合わせてもたせるので、その日の主人公の女優さんが、ドレスを着替えるのに必要な10分だけは、なんとかお願いします」ということになったんですよ。で、いざイベントが始まって、その方が着替えるシーンになりました。僕がステージに出て、トークをしました。「いつ着替え終わるのかな」と思ってふと横を見たら、その女性が着替えないで椅子に座って待ってるんですよ! もうすでに7分ぐらいトークで繋いでるのに、なぜあの人はここにいるんだろうと焦っていたら、その方も気がついたみたいで、「え? 今が着替えの時間ですか?」って。そこから着替えに行かれたので、結局15分ぐらい一人でしゃべっていましたね(笑)。

−−本にも書かれていましたが、仕事をする上で下調べがどれだけ大切かということもよくわかりました。
ステージに出ている時間は本当に短いですが、下調べなど地味な仕事のほうが、イベントに関しては圧倒的に長いんですよね。ドラマをゆっくり観る時間もないので、電車や新幹線での移動の時間もひたすら観ていますし。この間現場で、BSフジで放送されている韓国ドラマのOST番組に一緒に出演している(ドランクドラゴンの)塚地武雅さんと「いつドラマを観ているか」という話になったんですけど、塚地さんは「ドラマ撮影の合間とか移動、待ち時間にも観ることがある」とおっしゃっていました。これ以外にも、スターのSNSやファンの皆さんがどんなことを考えているかを知るために、ファンの方のSNSもマメにチェックしていますし。下調べをしようと思ったら、キリがないんです。

−−アーティストや俳優とのお仕事で嬉しかったことはありますか?
僕はポリシーとして、スターと個人的な関係を持って、それで関係性を強化して仕事に生かそうというタイプではないんです。ですから、現場での仕事っぷりを評価されて、次の仕事に繋がったときはうれしいですね。例えば「アーティストさんがご指名です」とか、「あの俳優さんが、またMCは古家さんでお願いしますと言ってます」という風に言われると、「あ~、この仕事をやっててよかったな」って、思います。

ステージではアーティストの皆さんを
少しでもホッとさせてあげたいんです

−−ファンの方から言われて嬉しかった言葉はありますか?
「スターが、普段見せない姿を見せてくださってありがとうございます」という言葉ですね。MCの仕事って、簡単にやろうと思えば、どこまでも簡単にできてしまうんです。台本があって、その通りにすれば、イベントは滞りなくできるようになってるんです。でも、皆さん外国人ですから、どんな人でも当然緊張しているわけです。ですからそういう時は、韓国でイベントをやっているような、韓国で音楽番組に出てるような環境を少しでも作ってあげたいと思っています。そうすれば、皆さんも少しはホッとできるでしょうし、普段なかなか見せないような素の表情、姿を見せてくれると思うんですね。でも、その空気感を作るのって意外と難しくて。僕も「できるようになったな」って感じるようになったのは、ここ10年ぐらいなんです。それまでは僕もずいぶん悩みました。結果的に、「僕がすべての責任を負うから、とにかく自由にやってください」と伝えるようになったんです。スターが困った時には、僕がサポートすればいいやと。そうすると、韓国でも見せないような姿だったり、おしゃべりだったり、表情だったりを見せてくれることが多くなりましたね。それで先のファンの方からのコメントにつながるわけです。言われたときは「ああ、よかったな」って思います。それが僕にとって一番の褒め言葉です。

人気が出るアーティストは
一瞬でわかります

−−「人気が出るアーティストはここが違う」、というのは感じますか?
一瞬でわかります。それは、オーラです。新人グループであっても、事務所パワーとか関係なく、この子たちは瞬間的に「人気が出るだろうな」と感じることはありますね。やっぱり20年もこの仕事をやっているから、パターンにしちゃいけないんですけど、やっぱりパターンがあって。一瞬で「あっ!」って気づく魅力があります。

例えばStray Kidsが日本で初めて行ったコンサートを観た時、「この子たちは絶対に人気が出ます!」って、みんなに力説したんですよ。初めてのコンサートなのに、ステージワークがすごすぎて。K-POPアイドルのステージを見ていると、フォーメーションのために意外と自由に動けないことに気づいた人もいるのではないでしょうか。そう、動きがテレビの音楽番組サイズで留まっていることが多いんです。でもStray Kidsは日本で初めてコンサートをした時から、ステージの端から端まで走り回っていたんです。「こんなパフォーマンスができる新人はそうそういない」と思って、「絶対に人気が出る」って確信しました。今や世界中で大人気となりましたね。

BTSも一番最初のショーケースのリハーサルを見た瞬間に「人気が出る!」と直感しました。彼らのパフォーマンス力はすごかったですよね。そういう、一瞬で人を虜にする魅力みたいのって、人気が出るアーティストにはやっぱり備わっているんですよね。

今年のKCONではTEMPESTというボーイズ・グループと仕事をさせてもらったんですけど、「この子たちは人気が出そうだな」と思いました。2023年、TEMPESTは人気が出るかも、いや出てほしいと思います。

−−オーラというのはパフォーマンスしている時のものですか? それとも実際に近くで会った時に感じるものですか?
例えばショーケースなどで一緒にお仕事したりする時に感じることが多いですね。言葉で表現するのは難しいんですけど、肝は「また会いたい」と思えるかどうか。「この子たちとまた仕事したい」と思うグループは、これまでほぼ人気が出ています。

−−個人的に印象に残っているライブはありますか?
ライブで言えばやっぱりBIGBANGのドーム公演ですね。日本語を使いこなし、縦横無尽にステージを走り回る彼らの姿を見たときに、感動しましたね。デビューして以降、早い段階から小さな会場からこつこつとライブ経験を積んできたからこそ、東京ドームという大きいステージを自分たちのものにして、客席を1つにできたと思うんです。あのライブ力は、BIGBANGがこれまで見てきたK-POPアーティストの中ではズバ抜けて一番だと僕は思いますね。ライブって<いきもの>だから、その時、その瞬間の空気を掴まなきゃいけない。しかもそれを日本語でできるというのは本当にすごいなって思います。BIGBANGのすごさはそういうところですね。トークもうまいし、トークから曲に行く流れも自然だし。また彼らのステージが観たいですね。『FANTASTIC BABY』みたいに盛り上がる曲をライブ前に流して盛り上げるのも、今でこそ他のアーティストもみんなやってるけど、BIGBANGが始まりですから。『FANTASTIC BABY』が流れてきたらライブが始まる……みたいなね。あそこからもうライブが始まってるっていう。本当にライブバンドですよね、彼らは。

>>インタビュー3回目に続く。

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【古家正亨(ふるや まさゆき) PROFILE】
北海道出身。北海道医療大学看護福祉学部医療福祉学科臨床心理専攻卒。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。98年韓国留学。帰国後K-POPの魅力を伝える活動を、マスメディアを中心に展開。2009年には日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。日本で開催される韓流・K-POPイベントのMCとしても知られるほか、数多くのラジオ、テレビ番組を担当。著書に『ALL ABOUT K-POP』(ソフトバンククリエイティブ)、『Disc Collection K-POP』(シンコーミュージック)、『韓国ミュージック・ビデオ読本』(キネマ旬報社)など。
Twitter:@furuyamasayuki0

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『K-POPバックステージパス』 
著者:古家正亨
発行:イースト・プレス
発売日: 2022年12月7日

日本における韓流・K―POPブームを間近で見守ってきた、人気MC古家正亨の初エッセイ。人気K-POPスター達から「ふるやさ〜ん!」と親しまれ、来日プロモーション時やイベントMCを数多く務めていることからファンにもお馴染みの存在である著者だが、そのバックグラウンドには、ラジオDJとしての活動にこだわり、韓国のポピュラー音楽である「K-POP」の魅力を日本に伝えようと、四半世紀にわたって努力を続けてきた姿があった。音楽を通じて、日韓の架け橋として活躍してきた著者の、20数年にわたるその活動を振り返り、次の世代を担う若者たちに贈るメッセージと共に、その未来を託していく。また、スターからも、ファンからも愛されるその“MC術“の秘密も。

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