MCでありラジオDJの古家正亨さんの新刊『K-POPバックステージパス』発売記念インタビュー第3弾は、韓国についてのあれこれを語っていただきました。プライベートな質問も根掘り葉掘りして、古家さんというパーソナリティに迫ります! インタビュー全3回、最終回です!
人懐っこさとステージのギャップが魅力のATEEZ
「彼らがドームに立つ姿を見たいです」
−−『S Cawaii! MEN』で、ATEEZの特集をするのですが、古家さんのラジオ番組『K TRACKS』でもATEEZの特集をされていましたね。トーク番組やイベントなどでの古家さんとATEEZのメンバーとのやりとりはいつもとても楽しいです。
僕がATEEZと最初にお仕事させてもらったのは、神奈川大学の学祭だったんです。その前から評判は聞いていたし、それこそBlock Bの事務所からデビューしたグループで、デビュー前から動画がバズっていたじゃないですか。でも生でパフォーマンスを観た時に、びっくりしたんですよ。評判以上のポテンシャルを持っていたグループだったんです。学祭の小さなステージが、あのメンバーのパフォーマンスの足の力で、潰れるんじゃないかって心配になったぐらい全身全霊でステージに取り組んでいる姿を見て、感動して胸がいっぱいになりました。しかも、ああいう一聴すると尖がった音楽をやっているんだけど、みんな素直でいい子ですし……。そのギャップにやられましたね。それに、すごく積極的に日本語や日本の文化のことを知ろうとする子たちなんですよ。「これは日本語でなんて言うんですか?」とか、いろんな質問をしてきてくれて……。
例えば旅行者が旅先で嫌な思いをすると、その国のイメージって悪くなっちゃうじゃないですか。でも逆に、いい思いをするとその国のことが好きになるって経験、あると思うんです。僕の仕事がまさにそれで、日本という国を韓国から来日されるスターの皆さんに好きになってもらいたいんです。そのために、僕ができる限りのことを常に最善を尽くしてやってきたつもりです。そして、それが活かされたと感じたときは、やっぱり嬉しいですよ。まさにATEEZの皆さんがそのケースで、その時の僕の接し方だったり、話し方だったり、思い出を、その次の来日時までちゃんと覚えていてくれて、現場で会った時に「古家さーん!」って走って会いにきてくれたり、「あの時、あんな風に接してくれてありがとう」って言ってくれたり。そこから少しずつ、メンバーの空き時間に話をする機会が増えて、そういう1つひとつのやりとりで、ケミじゃないですけど、彼らとはいい化学反応があるなって、自分でも思いますね。
でもそういうことって、実は滅多にないんですよ。だから本当に毎回、ATEEZのみなさんにはありがたいと思っています。それはみんなの性格の良さもあると思うんですけれど。以前、リリースイベントの時、MC控え室にいたらメンバーが入ってきて、ひたすらおしゃべりして帰っていったっていう時もありました。「日本語でどういうふうに言ったら、よりファンに気持ちが伝わりますか?」とか、個人的な話だと「奥さんとはどうやって出会ったんですか?」とか(笑)。アーティストの方とそういう会話をすることってほぼないので、「本当に人懐っこいな」って思いましたね。それでいて、あのパフォーマンスじゃないですか。先日の千葉・幕張のライブも感動的でした。ソロもユニットステージもなくて、最初から最後までグループステージだったじゃないですか。途中のVCRも短くて、「休む暇がなくて大変そうだな」と思いながら観ていましたね。そういう一生懸命な姿を観ていると、もっともっと応援してあげたいと思うし、彼らがドームに立つ姿を見たいですね。
SEVENTEENが8年目にして初めてドームに立った時、
「よくぞここまでがんばったな」と思いました
SEVENTEENが8年目にして初めてドームに立った時も、「よくぞここまでがんばったな」と思いましたね。第4世代K-POPスターたちは、デビューして間もないグループでも、デビュー当初から世界的な人気を得ているグループも多いので、すぐにドームのような大きなステージに立てる方もいますが、もちろん、それはそれで素晴らしいことですし、人気があるからこそ、できることだとは思うんですけれど、僕が長年見てきたスターたちって、みんな長い間苦労してきた人たちが多いなので、そういう姿を見てきたから余計に、心から応援したくなりますよね。
個人的には、どうしてもCNBLUEには、東京ドームでライブをやって欲しいです。
実は台本だった!?
CRAVITYの焼肉弁当エピソード
−− 実は以前、S Cawaii! WEBの連載『CRAVITY ゆる日記』のインタビューでメンバーのソンミンさんが「古家さんとお仕事でご一緒したときに、僕たちが日本に行ったら楽屋に焼肉弁当を用意してくれるって言っていたので、それが楽しみです!」とおっしゃっていたのですが、本当に焼肉弁当を差し入れされたんですよね?
CRAVITYとはそれまでオンラインでしか仕事をしたことなかったんです。でも来日が決まって、しかも東京ではなく、大阪だけでライブをするという話を聞いて、どうしても観たい、会いたいと思う一方、時間を作れるかなぁと。すると所属事務所のスタッフさんから「メンバーが『古家さん、焼き肉弁当の約束覚えてますよね?』って言ってます」って連絡が……。実は、そのオンラインでイベントをやった際、「CRAVITYが来日した時には、僕が焼き肉弁当をごちそうしますから」って、台本に書いてあった通りそれを読んだんですが(笑)。つまり、それを本当に楽しみにしてくれてたようで、「メンバーが心の底から焼き肉弁当を楽しみにしています」と。これで約束を果たさないと、嘘つき日本人と思われてしまう……と、焼き肉弁当を届けるために、大阪まで行ったんです。事前にケータリングで高級焼き肉弁当を運んでくれるお店を探して、電話で予約して、僕より先に、弁当がライブ会場に届きました。本当に自腹なんですよ、9人分。しかもそんなに安くなかったんです!(笑) 3種類の肉が入ってましたから……(笑)。そこから仲が深まって、夏の『THE STAR NEXTAGE』というイベントで、やっと一緒に仕事することができたんです。実はよくあるんですよね、「古家さんがプレゼントする」って台本に書いてあることが。これからは簡単に「何かをあげる」とか言わないようにしようと思います。全部確認しないと(笑)。でも喜んでもらえてよかったです。
古家さんの次なる韓国の推しは家電!?
−−韓国のエンタメ、フード、その他様々なカルチャーがある中で、古家さんの今一番の「韓国の推し」は何ですか?
家電ですね。うちにはいろいろ韓国の家電がありますけど、留学していた時から韓国の家電が好きだったんです。韓国の住宅事情に合わせて作られているものなので、基本、大きいものが多いんです。でもそのデザインは欧米のものではなく、欧米+アジアの洗練さが備わったもので、日本の家電とも一味違った魅力があるんです。かつては、同等の機能が備わっていても、日本の製品よりも安いことが魅力だった韓国家電でしたが、それが今や高級ブランドになり、「デザインがいい」と言われてるんですよね。日本でそんな風に受け入れられるようになるとは正直想像できませんでしたが、そもそも昔からデザイン力は高かったんです。
『K-POPバックステージパス』 の中でも僕がヒュンダイの車を2台買った話を書いてますけど、今ではヒョンデという現地で使われている発音のままで日本に再進出を果たし、2022年には、日本でインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを獲ったんですよ(日本カー・オブ・ザ・イヤーで電気自動車のIONIQ 5[アイオニック5]が受賞)。韓国車では初めてのことなんですけど、これからそういう時代なのかなって。
昔はなんでもかんでも日本のものが良いと思っていた人たちが圧倒的に多かった日本でしたが、今の若者たちは、そうではなく、良いものであれば、国やブランドは関係なく積極的に吸収していくっていう感じになってきていますよね。それが逆に、力が落ちてきたといわれる日本のメーカーやブランドの競争力アップにつながっていけばいいんじゃないかと思うんです。だから良いものはどんどん、いろんな国や地域から日本に入ってきてほしいですね。
−−そんな中で、古家さんが一番オススメしたい韓国家電は?
COWAY(コーウェイ)の空気清浄機! 念のためにお伝えしておきますが、僕、自腹で買っていますから! 一番高いやつを(笑)。COWAYの空気清浄機のいいところは、PM2.5に対する対応力が高いこと。日本は、花粉を重視する傾向が強いですが、韓国はPM2.5と黄砂という……これも環境の違いが大きいと思います。だから、よりフィルターが細やかなんですよね。あとはメンテナンスが楽。日本の製品って何層にもフィルターがわかれていて、確かに機能性は高いんですが、それを全部外して洗わないといけない手間がかかるんです。COWAYのものは、何層ものフィルターが1つにまとまっていて、一つ交換すれば良いだけなんです。プレフィルターの手入れもかなり簡単です。だからすごくスマート。それにデザインがいいんですよ。日本のメーカーは、わかりやすさを重視するじゃないですか。仕方がないことなんですけれど、わかりやすさを重視すると、デザインはごちゃごちゃになってしまいがちですよね。ただ、シンプルさを追求するとわかりにくい。韓国はどちらかと言うと最近のデザインの主流はシンプルさの追求なんです。だから家電というよりも置き物というか、それこそアートみたいな感じのデザインテイストなんです。そういうところが根本的に違う感じがしますね。
音楽のみならず、ドラマ・映画・MV……。
そして古家さんが応援しているアーティストは?
−−韓国の映画やドラマ、MVでオススメの作品は?
ドラマは『ミセン -未生-』と『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』ですね。どちらも同じ監督のキム・ウォンソクさんの作品です。特に『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』は、日本も含めたいろんな国のドラマの中でトップ3に入りますね。どちらかというと、僕は純粋な韓国ドラマよりは、それっぽくないないドラマが好きなので、『ミセン -未生-』と『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』も、ちょっと一癖ある作品ですよね。ドロドロな三角関係や復讐モノとかではなく、この2作品は、人間らしさが描かれてるんですよね。ラブラインも全然ないんですけど、ただただストーリーで魅せていくっていう。『シグナル』もそうですし、この監督さんの作品が好きなのかもしれませんね。
MVは、すごく古い曲なんですけどチョ・ソンモさんの『To Heaven』。イ・ビョンホンさんが出ていたものですね。このMVを観た時は、最初「なんじゃこりゃ!」と思いました。韓国のMVって、当初はカラオケビデオみたいなものが多かったんです。短編映画みたいなストーリー仕立てで。「こんなに面白い世界があったのか?」って気づかされたのが『To Heaven』だったので、僕の中では忘れられないMVですね。
映画は、一番最初に感動した作品はホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』かな。「こんなにきれいな美しい映画が韓国に存在したのか!」と驚かされました。韓国映画って、90年代は日本ではレンタルビデオショップのアダルトコーナーの横に置かれていたイメージが強かったんです。レンタルビデオの時代は、主にエロティックなイメージの作品が日本に入ってくるイメージだったんです。それが『風の丘を越えて』から『八月のクリスマス』、そして『シュリ』と来て、アート系作品からエンタメ系作品が主流になり、それ以降の勢いはご存じの通りです。
−−応援しているアーティスト・俳優は?
今日もここに来るまで取材していたんですけど、Billlieにはがんばってほしいですね。彼女たちは、もっと人気が出てもおかしくないと思います。日本人メンバーも2人いますから、日本活動においては、いろいろと有利な面もありますし。曲も良いので、もっと日本でがんばって、評価されてほしいなって思います。
【編集部】実は、このインタビューの後に行われた渋谷タワーレコードの古家さんのトークショーにBilllieの皆さんがサプライズ登場! 何も知らなかった古家さんは、「今年一番うれしかったことかも!」というほど感激されていました。
サプライズで登場したBilllieの皆さんのために著書にサインをする古家さん
俳優さんも本当にたくさんいるんですけれど……。最近、ドラマ『ドクター弁護士』のイベントでソ・ジソプさんとお仕事をさせてもらったんですが、その時、特別ゲストで俳優のイ・スンウさんが来てくれたんです。『私の恋したテリウス~A Love Mission~』にも出演されていて、まだ若手なんですけど、会場にいたマダムたちの心をしっかり掴んでいましたね。『ドクター弁護士』ではソ・ジソプさんの後輩の医師役で出ているんですけど、主役クラスで活躍される可能性は十分にあると思います。背もすごく高くて、顔も小さくて……。すごく新鮮でした。ステージに登壇する際、マイクを叩きながら「あーあー」って言いながら登場したスターは、久しぶりに見ました(笑)。フレッシュさが伝わるエピソードだと思います。
韓国語を覚えたいなら、恋愛するのが一番!
−−韓国語を勉強している人に、一番効率的な勉強の仕方を教えてください。
一番簡単なのは恋愛すること(笑)。それが一番早いでしょう。ただ恋愛といっても、誰かに恋心を抱くことだけでもいいと思うんです。好きなスターがいるとか、そういったことも含めて、恋をすればいいと思うんです。好きなスターができると、例えばハングルでうちわを作りたいとか、会った時に気持ちを韓国語で伝えたいってなるじゃないですか。それが勉強の原動力になると思うんですよね。だからやっぱり恋をすることが一番の近道じゃないでしょうか。
−−韓国旅行に行く人にアドバイスをするならば?
昔は本当に情報がなかったけれど、今はどんな情報でも手に入るので、逆に怖いことはないんじゃないかと思うんです。ただ、あえて言うなら、意外とクレジットカードが使えない場所があるということかな(笑)。屋台でのカード払いは可能なところは増えていますが、正直、お店の人には喜ばれませんし……。なので、現金はそれなりに持って行ったほうが良いと思います。あ、でも5万ウォン札は使わない方がいいです。本当に嫌がられますから(笑)。日本の銀行で両替すると、大体5万ウォン札になるので、韓国での両替をオススメします。
−−韓国でよく行く場所は?
恵化(ヘファ)ですね。あのあたりは劇場とかライブハウスとかでごちゃごちゃしているんですけれど、面白いカルチャーに出会える場所です。あと昔はレコード屋が弘大(ホンデ)にたくさんあったんですけれど、今はあまりなくて……。オススメは南大門(ナンデムン)近くにある新世界百貨店の地下につながる地下商店街。そこにあるレコード屋が穴場です。僕が韓国の廃盤CDを買いによく行っていた場所なんですけれど、最近は韓国でもレコードブームで、みんなそこにレコードを買いに行くんですよ。日本にはもうない幻の名盤とかが結構見つかるとかで、日本のDJとかも、結構この店に買いに行くそうですよ。
−−古家さんが好きな韓国料理トップ3は?
1位がカムジャタン、2位はケランチム、3位はタットリタン。鍋ものが好きですね。タットリタンって今はタッポックンタンという名前になったんですが、でも直訳したら鶏肉炒め鍋って、炒めるのか鍋にするのかどっちなのっていう(笑)。結構辛い料理ですが、やみつきなる味です。
−−20年前の自分に言ってあげたいことは?
「面白い未来が待っているからね」ですね。
「なりたい職業1位」だけど、
生まれ変わったら、同じ仕事はしたくない!?
−−生まれ変わったらどんな仕事をしたいですか?
うわぁ、これは初めて聞かれる質問ですね! 生まれ変わったら、同じ仕事はしたくないです(笑)。僕、もともと建築家になりたかったんです。叔父が建築会社の社長だったので。小さい時に、おばあちゃんの家に遊びに行ったら、その叔父がいつも建物の設計をしていたんです。それを見ているだけで、楽しそうな仕事だなって。小学1,2年生の頃までは、建築士というか、設計士になりたかったんですよね。なので暇さえあれば、レゴやブロックを使って、自分なりのデザインで家の模型を作っては、こんな家に住んでみたいと楽しんでいました。
−−次なる夢は何ですか?
本にも書きましたけど、自分が得た知見を、次の世代に引き継ぐというわけではないですが、それらを活かしながら、日本で、もっといい環境を作ることができれば……と。日韓の間のプロデューサーのような役割って、本には書いたんですけれど、「もうちょっと、こうしたらいいのに」っていうことが、この仕事をしていると、たくさんあるんです。そこをサポートする仕事を通じて韓国のスターたちが、より日本で活躍しやすい環境を、これからも作っていけたらと思っています。
【古家正亨(ふるや まさゆき) PROFILE】
北海道出身。北海道医療大学看護福祉学部医療福祉学科臨床心理専攻卒。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。98年韓国留学。帰国後K-POPの魅力を伝える活動を、マスメディアを中心に展開。2009年には日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。日本で開催される韓流・K-POPイベントのMCとしても知られるほか、数多くのラジオ、テレビ番組を担当。著書に『ALL ABOUT K-POP』(ソフトバンククリエイティブ)、『Disc Collection K-POP』(シンコーミュージック)、『韓国ミュージック・ビデオ読本』(キネマ旬報社)など。
Twitter:@furuyamasayuki0
『K-POPバックステージパス』
著者:古家正亨
発行:イースト・プレス
発売日: 2022年12月7日
日本における韓流・K―POPブームを間近で見守ってきた、人気MC古家正亨の初エッセイ。人気K-POPスター達から「ふるやさ〜ん!」と親しまれ、来日プロモーション時やイベントMCを数多く務めていることからファンにもお馴染みの存在である著者だが、そのバックグラウンドには、ラジオDJとしての活動にこだわり、韓国のポピュラー音楽である「K-POP」の魅力を日本に伝えようと、四半世紀にわたって努力を続けてきた姿があった。音楽を通じて、日韓の架け橋として活躍してきた著者の、20数年にわたるその活動を振り返り、次の世代を担う若者たちに贈るメッセージと共に、その未来を託していく。また、スターからも、ファンからも愛されるその“MC術“の秘密も。
PRESENT
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応募方法は下記画像をご覧ください。