11月5日から公開される『シノノメ色の週末』は、女性監督ならではの感性で、女子高ならではのやわらかな雰囲気が特徴的な作品です。今回は穐山監督に、映画のこだわりや印象に残っている出来事などを伺いました。
――監督から観た主演三人の魅力は?
”女子高出身の三人”という設定だったんですが、それぞれの学生時代のキャラクターはギャルっぽい美玲、マジメなまりりんという風に別々にしていました。10年振りに会って仲良く和気あいあいと、その当時の感じに戻る雰囲気を作りたかったんですが、撮影前に三人で顔合わせをするタイミングがなくて。少し心配だったんですが、結果的にすごく仲良く打ち解けてくれたんです。それが映画にも現れていますね。三人のやわらかい雰囲気が出て、キャラクターが立ってよかったなと思います。
桜井さんは映像のお芝居に数本しか出ていなかったのもあって、最初はすごく心配していたようでした。色々と相談されたりしていたんですが、実際やりだしてみたら、すごく飲み込みが早くて。私がやりたいことを吸収してくれて、すごく真面目な人だなと思いました。美玲ちゃんは大胆な感じの中に繊細さがあるキャラクターなんですが、繊細な部分が桜井さんにもあるなと思いましたね。桜井さんも女子高出身なので、女性が好感をもてる雰囲気があって。クラスの人気者な美玲ちゃん像をやってくれたなと思いました。
岡崎さんはすごくお芝居に熱心な方で、わからないときはピンポイントで質問してくれて、色々と考えながら演じてくれました。本人はまりりんみたいな真面目なキャラクターじゃないと言っていたんですが、お芝居に関しては真面目だと思いましたね。昔はちょっと地味だったけど、今は広告代理店でバリバリ働いて垢抜けているまりりんは美玲ちゃんと違う雰囲気があって。二人ともモデルもやっているので華やかさもあって、役にぴったりだなと思いました。
三戸さんは、そのままアンディという感じでムードメーカー。最初に打ち解けるキーパーソンになって、彼女を介して場が和みました。学生時代も文化系女子で、みんなのなごみ役。クラスに一人はいそうな雰囲気で、すごくぴったりだなと思いました。衣装も似合っていて。そこにアンディがいる感じでした。
――今回監督としてこだわった部分は?
私が女子高出身だから感じるんですが、世間的にイメージされがちな女同士のギスギスや、女子高って怖いんでしょ?というイメージは、実際とかけ離れていると思うんです。実は女同士だとほのぼのしているんだよという部分や、女子高特有の平和な感じをリアルにやりたいなとは思いました。最初の出会いのシーンも、10年ぶりに会うのでキャピキャピした感じになるイメージがあると思うんですが、意外と淡々と描いていて。リアルな、作られていない感じは意識していました。
――現場での思い出や、印象に残っていることは?
色々あるんですが、終盤に美玲が一人でMDを聞くシーンですね。時空を超えて美玲が大切なことに気付く大事なシーンだったので、どういう風に撮ろうか悩みました。でも、桜井さんがすごくいいお芝居をしてくれて、いい表情が撮れたなと感じました。前半での撮影だったので、どうなるかな……と思ったんですが、すごく安心しました。
――今回の作品でいちばん伝えたいことは?
二十代後半の女の子たちが悩んで葛藤し、もやもやしている自分の気持ちに向き合う話でもあります。ちょうどアラサー世代だとリアルに見られるところもあると思うし、もっと若い世代は、十年前に高校を卒業した人たちはこうなんだ、みたいな楽しみ方もあると思います。悩んでいるところを、少し一歩踏み出せるような気持ちになってもらえたらいいですね。あとは昔の「Cawaii!」を見たりして、10年前のカルチャーをもう一回おさらいして研究しました。そういう部分も楽しんでもらえたりするかもしれません。
――今度監督としてどんな映画を作っていきたいですか?
女性が主人公で色々な世代の作品をこれからも作っていきたいですね。今に生きる女性の気持ちの移り変わりなどを描いていきたいなと思います。
Profile
穐山茉由
ファッション業界で働きながら、映画美学校で映画制作を学ぶ。長編デビュー作『月極オトコトモダチ』が第31回東京国際映画祭に出品され、MOOSIC LAB 2018では長編部門グランプリほか4冠を受賞。dTVドラマ「猿に会う」脚本、全編台湾で撮影した短編「嬉しくなっちゃって」や「蒲田前奏曲」第2番「呑川ラプソディ」の監督・脚本を担当。
Information
穐山監督が描き下ろした小説「シノノメ色の週末」は11月5日に主婦の友インフォスから発売。黒丸恭介が描くコミカライズ版も一部電子書店で11月5日に、書店では11月18日に発売。
【作品詳細】
映画「シノノメ色の週末」
公開:2021年11月5日(金)
監督・脚本:穐山茉由
キャスト:桜井玲香、岡崎紗絵、三戸なつめ、中井友望、山田キヌヲ、工藤阿須加
<あらすじ>
女子校を卒業して10年ぶりの再会、週末だけ母校に集まる3人
「ここに来れば、輝いていたあの頃に戻れる」ってパターンのはずが──!?
女子高を卒業して10年、美玲(桜井玲香)はモデルを続けているが、いつの間にか雑誌のグラビアを飾ることはなくなった。そんな中、放送クラブで一緒だったアンディ(三戸なつめ)から、部長だったまりりん(岡崎紗絵)と3人で、取り壊しになる母校にタイムカプセルを探しに行こうと誘われる。超マジメで目立たなかったまりりんが広告代理店に就職し、デキる女ぽくなっているのを見て焦り、相変わらずカメラ好きサブカル系のアンディにホッとする美玲。裏門から忍び込んだ3人は、廊下を走り、笑い転げ、やりたい放題。結局、タイムカプセルは見つからず、また週末に集まることになる。何にでもなれると思っていたあの頃の自分に戻ったつもりの3人だったが、事態は全然! 違う方へと転がっていく──。
(C)2021映画「シノノメ色の週末」製作委員会
撮影/武田和真