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HOME 【エッセイ『K-POPバックステージパス』発売記念。「K-POPファンがなりたい職業1位」MC・古家正亨さんインタビュー(全3回・1回目)】 「この本を読んだら古家さんみたいになりたいとは思わなくなるような気もしますね」(編集部) 「僕もそう思います(笑)」(古家さん)
2023/2/9 CULTURE

【エッセイ『K-POPバックステージパス』発売記念。「K-POPファンがなりたい職業1位」MC・古家正亨さんインタビュー(全3回・1回目)】 「この本を読んだら古家さんみたいになりたいとは思わなくなるような気もしますね」(編集部) 「僕もそう思います(笑)」(古家さん)

S Cawaii! 編集部

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韓流・K-POPイベントでおなじみ、MCでありラジオDJの古家正亨さんが自身の経験をエッセイ風に記した書籍『K-POPバックステージパス』を発売。それを記念して昨年末にタワーレコード渋谷店でトーク&サイン会が行われました。

普段と違ってステージの端ではなく、中央にいることに最初は戸惑う様子ではあったものの、トークを始めたらあっという間にいつもの古家ワールドを展開。イベントの終盤にはサプライズで韓国のガールズグループBilllieがステージに登場。彼女たちの登場に本気で驚きつつ、会場を訪れた自身のファンにBilllieの魅力をアピールし、「ぜひ応援してほしい」と援護射撃も忘れない古家さん。最後はBilllie、そして客席との写真撮影でイベントは終了。サイン会ではファンとの個別のトークを楽しんだそう。

そしてイベント直前、S Cawaii!単独インタビューを実施。「今日は主役だから」と奥様に言われていつもよりほんの少し明るい色を取り入れたジャケットを着た古家さん。エッセイ『K-POPバックステージパス』がどうして書かれることになったのか、「K-POPファンがなりたい職業1位」と言われることについて、そして今一番推している韓国カルチャーについてなど、ざっくばらんに本音をお聞きしました。インタビューにたっぷりお答えくださったので、3回に渡ってお届けします!

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自分がメインのトークショーなのに、「あ~。ここが一番落ち着く~!」といつものMCの立ち位置、ステージの端っこでトークする古家さん

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古家さんのトークイベントにサプライズ登場したBilllieの皆さん

留学先のカナダで初めて韓国の人と触れ合って、
自分が無知だったことに気づいたんですよ。
「アジアの中の日本」ということを思い知らされたんです

−−著作を拝読させていただきましたが、今のように「韓流」「K-POP」「韓国カルチャー」がまったく知られていない状況下で、なぜこんなに多くの困難を乗り越えて途中で諦めることなく前に進めたのか? 古家さんを突き動かしたものは何だったのでしょうか?
僕は留学先のカナダで、初めて韓国の人と触れ合って、いろんな意味で自分が無知だったことに気づいたんです。90年代って、まだ日本人は経済的な成功体験に、どこか優越感を感じていて、自分がアジア人であるという意識よりも、アジアの中の唯一の先進国に住んでいる人っていう意識が強かったと思うんです。でも僕はカナダに行って、日本は数多あるアジアの国の中の1つでしかないということを思い知らされたんですね。「日本って、日本人って、このままの思考でいいのかな?」っていう思いが衝動としてあって、それをひたすら追求してきただけなんです。「本当にこのままで日本は大丈夫なのか?」という自問自答をずっと繰り返してきたという感じですね。その結果として、今まで続けてこれたのかなって。単純に好きなものを紹介するという気持ち以上に、日本人としていろんなことに気づかされたっていうのが、僕を突き動かした原動力として一番大きかったのかもしれません。

将来の日韓関係を考えた時、
きっと若い世代が本当に大きく変えてくれるだろうという期待は膨らみます

−−今や『S Cawaii!』でもK-POPアーティストや韓国コスメ・ファッションの特集は大人気です、古家さんはこんな時代の到来を予測していらっしゃいましたか?
全く予想できませんでした(笑)。2010年の段階で、「世の中が変わるかな」って思ったぐらいですね。長く業界にいる人たちは、2010年ぐらいのK-POP第二世代のブレイクと、2018年ぐらいから始まった第三世代から第四世代の流れって、まったく違って感じてると思うんですよ。どちらかと言うと、今の第四世代の人気の中心って、音楽を基軸としたカルチャーというか、ファッションとしてのK-POPだとするならば、2010年の段階では単純にK-POPという音楽にフォーカスが当たっていたと思うんですね。今、ファッション誌にK-POPアーティストがこれだけ出ているのは、彼女・彼らがカルチャーとしての牽引役を担っているという意味合いが強いと思うんです。そこがこの10年で大きく変わったところかなとは思いますね。

今の状況は僕が思っていた方向とは全然違うんですけど、若い人たちがK-POPという1つの窓口をきっかけに、他の文化を知ろうとする。まったく別の国を知ることの衝動になっているっていうのは、すごいことだなと思います。ただ、僕自身は韓国という国自体を知らないところから始まっているんですよね。エンターテインメントが初めて韓国という国を知るきっかけになったので、今の世代の子達とは、韓国との接し方は違うのかなって。でも、接し方は違っていても、将来の日韓関係を考えた時、きっと若い世代が本当に大きく変えてくれるだろうという期待は膨らみます。

それはもうすでに音楽の分野では達成されているのかもしれません。もはや若い子たちにどんな音楽が好きか聞いたら、「K-POPが好き」というよりも、「IVEが好き」とか、「TWICEが好き」とか、アーティスト名が出てくるようになっているんです。かつてはK-POPが好きで、その中の誰が好きというように言っていたのが、もはやK-POPというジャンルを意識しなくても、アーティスト自身が文化を作っているという感じになってきているし、今後ますますそういうふうになっていくのかなって。だから今はまだJ-POP/K-POPという言い方をしていますけど、数年後にはそういったジャンル分けは意味をなさなくなっているかもしれません。それに、今やK-POPグループに日本人メンバーがいるのは当たり前になってますし、ここまでメンバー構成がグローバルになってくると、もはやカテゴライズすることに意味がなくなってきているのかもしれませんね。

現場の人たちが尊敬の念を抱いて日韓お互いに努力していかないと、
一瞬のうちに日本における韓流がなくなる可能性はあると思います

−−今までお仕事をしてきた中で大変だったこと、逆に嬉しかったことはありますか?
どちらも数限りなくありますが、一番ショックだったことがあります。僕がK-POPの番組を立ち上げようとしていた時、韓国にいる知人や企業にその協力をお願いすると、「日本人なのに、韓国の文化を伝えてくれるなんて! なんでも協力するから」と言って喜んでくれたんです。その気持ちをもって日本に戻り、いざ日本の韓国関連の企業に協力を求めると、「私たちは韓国企業ではなく、グローバル企業なので、韓国色は出したくない」って言われたんです。そのギャップが当時の僕には衝撃でした。僕は純粋な気持ちで韓国の魅力を紹介したいと思っていたんですが……。本にも書きましたけど、その時初めて、日本国内における差別だったり、韓国に対する偏見に行き着いたわけです。そんな状況から20年経って、今やこれだけオープンになって、某スマホ企業はK-POPアーティストを起用して自ら韓国の企業であることを宣伝してますよね。この変わりように、日本における韓国観の大きな変化を感じます。

でも、こういうカルチャーが文化として根ざす一方で、一瞬の流行として過ぎ去っていくものもあると思うんです。僕がこの20年間、仕事で韓国に関わってきた中でも、もちろん流行の波を感じた瞬間が何度もありました。ただ、それを支えている人たちって、そんな波の押引きに関係なく、ずっと応援し続けてくれている人たちなんですね。一方でビジネスとしてはライト層のファンの人たちに頼ってしまうところもある。ですから、波が引きそうだと感じる瞬間に、その興味関心をいかに維持してもらえるか……ということが大事になってくると思うんです。そういう意味でいうと、今は過渡期と言えるのではないでしょうか。そろそろ韓流上陸(ドラマ『冬のソナタ』が日本で放送されて)20周年を迎えるんですが、当時40代だった人は60代に、50代だった人はもう70代ですよね。これまで、ずっと日本における韓流を守ってきてくれた、支えてきてくれた人たちはもちろんですが、その魅力を次世代へとうまく世代交代していかないと、途切れる可能性が高いというのは、常に思っています。

今まで韓流が成功してきた理由って、日本と韓国が互いにWin-Winになることを求めながら支え合ってきたことで、いい結果を生み出して来れたからという背景があると思うんです。韓国の良いものを日本に伝えようとする日本人がいて、それに協力してくれる韓国人がいて、うまくサイクルさせてこれたと思います。でも、ここ数年はまったく違っていて、今や韓国のエンタメ業界って、日本の市場を世界の市場のうちの1つとしてしか見ていないと思うんですよね。そうなると、今まで優先されてきたあらゆるものが、今度は欧米優先になってくるわけです。特にK-POPは、今もうすでにそうなってきていますから。こうなると、先は短いと思うんですよね。もちろん、ビジネスチャンスとしての欧米っていう点では、大切だと思います。ですが、ここまで日本で韓流やK-POPを花開かせた人々の草の根的な努力によって、今のベースができていると思うんです。それを、目先のビジネスだけでなく、これまで、その現場に携わってきた人たちに対して、尊敬の念を抱いて、日韓がお互いにこれからも努力していかないと、一瞬のうちに、何かがきっかけでそのバランスが崩れる可能性もあると思うんです。

僕は、自分が今の仕事をやり続けることには批判的なんです。
K-POPの世代が変わるように、
いつかは、僕のような仕事も世代交代していくべきだとは思うんです。

−−古家さんのような仕事をしたいという方はかなりいらっしゃると思いますが、それについてはどう思われますか?
僕みたいな仕事に就きたいという人から、お手紙やメールをよくいただくんですよ。僕みたいな仕事って、具体的には「日韓の橋渡し役になりたい」とか、「韓国からスターが来た時のMCになりたい」とか、そういう話が多いんですね。ただ、今、僕はこういう仕事をしていますが、正直、元々こういう仕事したかったわけではなくて、気づいたらこの仕事をしていたという感じなんです。「ラジオでK-POPの魅力を紹介したい」という思いからはじめて、良い人との出会いと、運と、タイミングがうまく重なった結果、今のお仕事をさせていただいていると思います。なので「どうすれば古家さんのようになれますか?」という質問に、うまく答えられないんです。ひたすらその時、その瞬間、与えられた仕事をがむしゃらにやってきただけなので……。でも、本にも書きましたが、僕自身がこの仕事をやり続けることには、自分のことではありますが批判的なんです。K-POPの世代が変わるように、いつかは僕のような仕事も、世代交代していくべきだとは思うんですが……。

−−でもこの本を読んだら古家さんみたいになりたいとは思わなくなるような気もしますね。
僕もそう思います(笑)。

>>インタビュー2回目に続く。

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【古家正亨(ふるや まさゆき) PROFILE】
北海道出身。北海道医療大学看護福祉学部医療福祉学科臨床心理専攻卒。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。98年韓国留学。帰国後K-POPの魅力を伝える活動を、マスメディアを中心に展開。2009年には日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。日本で開催される韓流・K-POPイベントのMCとしても知られるほか、数多くのラジオ、テレビ番組を担当。著書に『ALL ABOUT K-POP』(ソフトバンククリエイティブ)、『Disc Collection K-POP』(シンコーミュージック)、『韓国ミュージック・ビデオ読本』(キネマ旬報社)など。
Twitter:@furuyamasayuki0

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『K-POPバックステージパス』 
著者:古家正亨
発行:イースト・プレス
発売日: 2022年12月7日

日本における韓流・K―POPブームを間近で見守ってきた、人気MC古家正亨の初エッセイ。人気K-POPスター達から「ふるやさ〜ん!」と親しまれ、来日プロモーション時やイベントMCを数多く務めていることからファンにもお馴染みの存在である著者だが、そのバックグラウンドには、ラジオDJとしての活動にこだわり、韓国のポピュラー音楽である「K-POP」の魅力を日本に伝えようと、四半世紀にわたって努力を続けてきた姿があった。音楽を通じて、日韓の架け橋として活躍してきた著者の、20数年にわたるその活動を振り返り、次の世代を担う若者たちに贈るメッセージと共に、その未来を託していく。また、スターからも、ファンからも愛されるその“MC術“の秘密も。

PRESENT
古家正亨さんのサイン入り『K-POPバックステージパス』 を2名様にPRESENT!
応募方法は下記画像をご覧ください。

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